
古美術商の久世は、神社巡りが趣味の取引先・岡部に、「人の訪れなくなった峠の社がある」と教えた。岡部は目を輝かせ、次の日曜に行くと言った。
その社は、四十段あまりの石段の上にある。石段の中央には、古い金属の手すりが頂上まで続き、社の正面にはぽつんと賽銭箱が一つ。数年前から、参拝者はほとんどいない。
日曜の夕方、犬の散歩で通りかかった住民が、石段の下に倒れている岡部を見つけた。頭を強く打っており、すでに亡くなっていた。足を滑らせた事故のように見える。
しかし、現場を調べた警察は、久世に告げた。「これは事故ではありません。殺人です」
警察が殺人と判断した決め手は、どれでしょう。
行き詰まったら、ヒントを順番に一つずつ開封してください。
手すりの指紋は、岡部が石段を「上った」のか「下った」のか、どちらを示していますか?
もし事故なら、岡部が落ちたのは石段を「下りる」ときです。その前に、神社好きの岡部が必ずすることは?
賽銭箱の中に、新しい硬貨はありましたか?
警察が殺人と判断した決め手は、どれでしょう。
真相に最も近いものを選んでください。
手すりの指紋は頂上まで続いているのに、賽銭箱に岡部の賽銭がなく、参拝せずに落ちたと分かったから
答えは「手すりの指紋は頂上まで続いているのに、賽銭箱に岡部の賽銭がなく、参拝せずに落ちたと分かったから」です。
岡部は手すりを握って、石段を最後まで上りきっています。もし事故なら、落ちたのは参拝を済ませて下りる途中のはずです。神社好きの岡部は、どの社でも必ず賽銭を入れて手を合わせる人でした。ところが賽銭箱には、新しい硬貨が一枚もなく、財布の小銭も減っていません。
つまり岡部は、頂上に着いてすぐ、参拝の前に落とされたことになります。久世は「事故なら下りで落ちる」ことまで考えが及ばず、先回りして頂上で待ち、岡部を突き落としてしまったのです。
神社で人が転落したと聞けば、「足を滑らせた事故」と読むのが自然です。しかも岡部が神社好きだったことが、彼がそこにいた理由を完璧に説明してしまい、「いつ落ちたか」を考える機会を奪います。
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