
木造アパートの二階に住む戸田は、三か月も家賃を滞納していた。見かねた大家が部屋を訪ねたが、返事がない。数日間、玄関は閉まったままだ。不審に思った大家は、合い鍵で部屋に入った。
戸田は、腹を鋭利な刃物で一突きにされ、部屋で倒れていた。すでに死後10日以上たっていた。
玄関は内側から施錠され、鍵は戸田のズボンのポケットにあった。合い鍵を持つのは大家だけ。窓はひとつだけで、内側からしっかり閉まっている。ほかに人の出入りできる場所はない。ただ、室内にも玄関前にも路地にも、血を拭き取った跡が残っていた。
戸田は旅行の計画を立てていたので、自殺の線は薄い。解剖では、刺されてから死亡するまで、数時間かかったと分かった。「偽ブランド品を転売している」という噂もあった。
容疑者は、柔道経験者の青井、血のついたTシャツを着た黒川、現場近くで目撃された赤松、護身用のナイフを持っていた白石の四人。
室内の血を拭き取り、玄関の鍵を閉めたのは、誰でしょう。
行き詰まったら、ヒントを順番に一つずつ開封してください。
鍵は被害者のポケットにありました。鍵をかけられるのは、誰でしょう?
刺されてから亡くなるまで、数時間ありました。その間、被害者はどうしていたでしょう?
被害者に「通報できない理由」はありませんでしたか?
室内の血を拭き取り、玄関の鍵を閉めたのは、誰でしょう。
真相に最も近いものを選んでください。
被害者の戸田本人
答えは「被害者の戸田本人」です。
戸田は部屋の外で刺され、数時間生きたまま、自分の部屋に逃げ帰りました。そして内側から鍵をかけ、自分で血を拭き取ったのです。偽ブランド品の転売という後ろ暗い秘密を持つ戸田は、警察や救急車を呼べば、自分の商売が明るみに出ると恐れました。
一方、路地の血を拭き取ったのは、刺した犯人です。自分に結びつく跡を消そうとしました。鍵が戸田のポケットにあるのも、本人が内側から閉めて、そのまま倒れたから。誰も部屋に入っていないので、そもそも「密室を作った人」はいなかったのです。
「施錠された部屋」「血の拭き取り」と聞くと、犯人が周到に細工した密室だと考えます。「被害者自身が閉めた」という発想は、被害者を「ただの被害者」としか見ないと出てきません。
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